「苦労が顔に出たら惨めやからね。それに悲観しててもしょうがない。そら誰でも恵まれた家庭に生まれたいけど、自分では親を選ばれへん。配られたカードで精一杯勝負するしかないやろ。…けど、あんたに配られたカードは、そう悪い手やないと思うけどな」


「好きな人と生きていると確信できれば、死の直前まで夢を見られるってことなんだよ。あんたのお父さんにとってお母さんは未来だったんだ。人間はどんな時でも未来を感じられるんだよ。どんなに短い人生でも、喩えほんの一瞬であっても、生きているという実感さえあれば未来はあるんだよ。あんたにいっておく。明日だけが未来じゃないんだ。それは心の中にある。それさえあれば人は幸せになれる。それを教えられたから、あんたのお母さんはあんたを産んだんだ。それをなんだ。あんたはなんだ。文句ばっかり言って、自分で何かを勝ち取ろうともしない。あんたが未来を感じられないのは誰のせいでもない。あんたのせいだ。あんたが馬鹿だからだ」